俳句の作り方 寒菊の俳句
血の色の寒菊咲かむ吾が忌日 伊庭直子いばなおこ
ちのいろの かんぎくさかむ あがきじつ
この句は2021年3月号の『河』誌に掲載されました。
寒菊が冬の季語。
24節気の寒とは無関係で冬に咲く菊の事。
また「俳句では遅咲きの菊が咲き残っているのを
寒菊・冬菊として詠むことが多い」
(俳句歳時記 冬 角川書店編)
ただしここではさに非ず。
冬に咲く菊のことです。
この句は2021年3月号『河』誌に掲載されました。
ご自分の忌日など考えたこともない方がほとんどだと思います。
しかし、両親と愛犬を2匹喪い古希を過ぎた私は考えます。
静かに情熱的に生きてきた人生が終わり、数年後命日がやってくる。
その命日には血のような鮮烈な赤い寒菊が咲くのだろうなあ、と。
血の色の寒菊咲かむ吾が忌日
わたしが自分の忌日を用いて句作しようと考えたのは
愛する河原枇杷男の一句がきっかけです。
枇杷男忌や色もて余しゐる桃も 河原枇杷男かわはらびわお
びわおきや いろもてあまし いるももも
桃が秋の季語ですが、この句の主体は枇杷男忌です。
つまり無季俳句です。
桃が主体ならば
桃や色もて余す枇杷男忌に、となり切れ字「や」の位置に注目してください。
句意を申し上げます。
自分の忌日には健康そうな色艶をもてあましている桃も生っているのだろうな。
そんな季節に死にたいものだ。
枇杷男忌や色もて余しゐる桃も
以上自分の忌日はどんな様子なのだろうという句を2句見てまいりました。
私は血のような色の寒菊を咲かせたいと思い
枇杷男は色艶をもてあましている桃も生っていてほしいと希求する句でした。
血の色の寒菊咲かむ吾が忌日
枇杷男忌や色もて余しゐる桃も
何年か前に私も作ったことがあります。私の所属する同人誌の仲間にしか通じない句です。
天の川いつか「河」誌に我が訃報